李栄薫(イヨンフン)氏の「反日種族主義」の定義
このところ、わかったつもりで使っていた「反日種族主義」について、『反日種族主義』編著者の李栄薫ソウル大教授が「プロローグ 嘘の国」にて定義をしていることに気づいたので解釈を試みる。
(1)反日種族主義とは、韓国に於ける「嘘が作られ、やがて文化となり、政治と司法を支配するに至った過ぎし六〇年間の精神史」に対する分析概念・理論枠組である。
(2)(韓国的)物質主義の文化システムの発生原理
①知的弁別力が低く、
それに対する羞恥心が無い社会
→ 嘘による利益が大きい為、人は嘘をつく
②社会が①に寛大であれば
「嘘をつくこと」が集団の文化として広がっていく
③社会の底辺には②に相応する集団の心性が
長期にわたって流れるようになる
=(韓国的)物質主義が成立
・お金と地位こそがすべての幸福の根本だとする価値観
・お金と地位のためなら手段・方法を選ばない行動原理
④物質主義の文化は嘘に対して寛大
⑤ ②に戻る(再帰的、システム循環)
(3)(韓国的)シャーマニズム
より長期的・巨視的には、この物質主義は韓国の歴史と共に長い歴史を持つ(韓国的)シャーマニズムとして体現している
→ (2)の物質主義は、善悪を審判する絶対者が存在しないので、
a)集団的には種族や部族と呼ぶべきもの
b)隣人を悪の種族と見なす
c)ここで「嘘」は種族を結束させるトーテムの役割を果たす
(トーテム=神話)
(4)反日種族主義
(3)のシャーマニズムは、より正確に表現すれば反日種族主義になる。
西洋の民族主義と違い、自由で独立した個人の概念が無い
=韓国の民族はそれ自体でひとつの集団・権威・身分である
=種族と言った方が適切
=隣の日本を永遠の敵と捉える敵対感情で結束する種族主義
((3)cより意訳すれば、)
=隣の日本を永遠の敵と捉える神話で結束する種族主義
(5)ありとあらゆる嘘が作られ、広がるのは、
ナッパー氏の発言の真意はどこ?
2019年8月8日 日本時間 7:42、共同通信からまた、米政府高官発言が報じられた。今回はマーク・ナッパー米国務省日韓担当国務次官補代理の名前が挙げられている。
曰く、8月7日にワシントンで開かれたシンポジウムでの発言であり、日韓に対し「関係改善には双方が責任を負っている」「ここ数カ月の相互信頼を損なう政治的決定について内省する必要がある」とし、喧嘩両成敗とばかりに日韓両方を叱責したかの論調の記事に読める。
しかし、Twitterで 閑道人 @risingsinot さんと ひよこ @jjaappaannhhiiy さんから情報を頂きながらいろいろ見ていくと、この発言はどうやらGSOMIAを破棄すると騒いでいる韓国政府と文在寅氏をやんわり諫めているニュアンスの方が強いのではないかと思われる。以下、簡単にまとめておく。
1. マーク・ナッパー米国務省日韓担当国務次官補代理
最初、この高官が7/30に日韓にStandstill Agreementを提案したとされる「匿名高官」ではないかと疑った。
ところが、マーク・ナッパー氏の名は7/10の朝鮮日報日本語版「輸出優遇除外:韓国高官ら支援求め訪米も、米は依然消極的」、7/31の中央日報日本語版「【グローバルアイ】「仲裁しようというワシントンの要人はいなかった」」などの記事に既に登場している。
彼は7/25に韓国からの陳情議員団と面会した際、「米国がどちらか片方に立って仲裁をすればもう片方の同盟と関係が損なわれかねない。米国ができる最善のことは韓日両国が対話できるように環境づくりをすること」だとして仲裁を断っている。
また8/2に日米韓外相会談が開かれたバンコクにおいて記者団と会見した「米国務省高官」も、立場と発言内容から見てナッパー氏だと考えられるが、「ソウルと東京の間の問題だ」と述べて、トランプ政権として仲介の意思がないことを表明したとのことである。(米高官、日韓問題「米国は仲介せず」 安保協力損なわれれば「能力低下」と対立解消を促す)
マーク・ナッパー氏がStandstill Agreementを提案した「匿名高官」だとは思えない。 cf.マーク・ナッパー - Wikipedia
2. シンポジウムでの発言の位置づけ
ところで、今回発言が報じられた、8/7にワシントンで開かれたシンポジウムとは、どこが主催するどの様な性質のシンポジウムで、ナッパー氏はどのような立場でこの発言をしたのだろうか。
ナッパー氏のTwitterAccount @MarcKnapper には、Bureau of East Asian and Pacific Affairs @USAsiaPacificからのRetweetがある。
DAS Knapper gave opening remarks at @Heritage on the importance of the US-#Japan-#ROK trilateral cooperation based on shared values and principles in maintaining a free and open Indo-Pacific region. pic.twitter.com/aZg1AJAm7m
— EAP Bureau (@USAsiaPacific) August 7, 2019
このTweetによると、8/7にナッパー氏が発言したシンポジウムは、ヘリテージ財団主催のシンポジウムであり、ナッパー氏は「自由で開放的なインド太平洋地域を維持するための共有された価値と原理を基礎とした日米韓の三極協力の重要性について」のopening remarks(開会挨拶)をしたとある。
Wikipediaによると、ヘリテージ財団とは「アメリカ合衆国ワシントンD.C.に本部を置く保守系シンクタンク。企業の自由、小さな政府、個人の自由、伝統的な米国の価値観、国防の強化などを掲げ、米国政府の政策決定に大きな影響力を持つ。」とある。
シンポジウムの詳しい内容の情報は見つからないのだが、この繋がりで行くと、インド太平洋地域戦略、即ち中国共産党支配下の中国封じ込め戦略に関するシンポジウムで、今後、米国政府の政策形成に繋がっていくテーマについて話し合うものだったと見て大きな間違いはないだろう。そのシンポジウムの開会挨拶として、ナッパー氏は件の発言をした訳だ。
3.ロイター英語版に見るナッパー氏自身の言葉
そのような文脈において、ナッパー氏は 「中国や北朝鮮、ロシアが「日韓関係の摩擦につけ込む」動きもあると指摘し、日米韓3カ国の連携に「くさびを打ち込むことを許してはならない」と訴えた」訳だ。(日韓険悪化「双方に責任」と米 関係改善促す | 共同通信)
だとすれば、真っ先に問題になってくるのはもちろん、韓国政府が人質に採っているGSOMIAであり、米国としては「破棄するとは何事か」ということに当然なる。
この発言について、ロイターの英語版にまあまあ長文の記事が出た。
この記事には、記者の要約文ではなく、ナッパー氏自身が発した言葉が書かれていると見られる部分がある。そこだけを抜き出して見てみよう。
ご覧の通り、mustが使われているのは(1)の「楔が打ち込まれるようなことがあってはならない」の部分だけで、(2)~(4)の日韓に関わることでは使われていない。日韓に関わる部分ではほぼすべてで"We believe"が使われている。
(2)の"each bears responsibility for"は、メディアで報じられているような「どちらにも責任がある」という強い口調ではなく、「責任を分け合ってる(と信じてるよ)」というニュアンスである。
(3)で"some soul searching"(ある種の魂の検証)と"prudence is required to prevent tensions contaminating the economic and security aspects"(経済と安全保障の局面を汚染する緊張から忌避する慎重さ)が"by the same token"(同じ理由から)必要だと述べられているが、この部分では「魂の検証」と「汚染する緊張から忌避する慎重さ」が必要な方を念頭にメンションされている感が強い。
とりわけ直接的なのは(4)で、"Calm confident words from national leaders"(一国のリーダー(達)からの落ち着いて信じられる言葉)が国民からの落ち着いて信ずべき反応を創出する、と米国は信じている、というこの発言は、客観的に見て、誰に向けられているだろうか。
ナッパー氏は、既に紹介したように、「米国がどちらか片方に立って仲裁をすればもう片方の同盟と関係が損なわれかねない」【グローバルアイ】「仲裁しようというワシントンの要人はいなかった」=韓国 | Joongang Ilbo | 中央日報 という姿勢である。
彼のこの発言を踏まえて考えれば、(1)mustが使われている部分は「GSOMIAの破棄はmust not」という意味であり、(2)日本に責任がないとはいわないけれど、(3)「魂の検証」と「経済と安全保障を維持する慎重さ」が必要な人が居る、そしてその人は(4)国民を落ち着かせる立場にある一国のリーダーに相応しい、落ち着いて信用できる言葉を使うべきだ、とナッパー氏は言っているようにしか見えなくなる。
それは、いうまでもなく、文在寅氏に向けられている遠回しな非難と見るのが正常な判断であろう。
即ち、ナッパー氏は、どうやらGSOMIAを破棄すると騒いでいる韓国政府と文在寅氏をやんわり諫めている、そういったニュアンスでシンポジウムの開会挨拶を述べているのではないかと思われる。
冒頭の共同通信の記事や日本語版ロイター通信の記事は、事の真相を意図してか意図せずか、日本にも責任があると随分ねじ曲げた論調のようにも読める。少なくとも、記事の論調を鵜呑みにするのが憚られる内容だというほかないだろう。
ポンポオ氏発言に関するFAKE報道覚え書き
■モンタージュによる錯覚
なぜこんなことになったのか?現象的にはモンタージュによる錯覚により、誰もが騙されてしまったように思われる。
モンタージュとは、『戦艦ポチョムキン』などで知られるソ連の映画監督エイゼンシュテインが提唱した映像理論で、あるシーンAと、それと何の関係もないシーンBとを連続して繋ぐことにより、映画で物語を語ることができるようになるというものだ。
例えば、シーンAで無表情な女性の顔のアップ、シーンBで花が供えられた墓、そしてシーンCでもう一度無表情な女性の顔のアップを繋ぐことで、家族を失って悲しんでいる女性の姿を描くことができるというもの。
初発と思われるロイターの記事で見てみると、
まず第一段落で「米政府高官は…一定期間、現状維持して交渉する協定への署名を求める仲介案を提示したと明らかにした」と来て、
第二段落で「ポンペオ国務長官は8月1日にバンコクで予定する日米韓外相会談で、河野太郎外相と韓国の康京和外相と仲介案について話し合う方針。」と続く
モンタージュ的にはポンペオ氏はあたかも米政府高官の言う現状維持協定について話し合うかに見えてしまう。
これを踏まえ、第三段落に至っては「日本政府は…韓国を除外する政令改正を2日にも閣議決定するとみられており、米側はその前に仲介に乗り出し、一層の対立激化の回避を狙う。」とまで書いている。実際には日付まで違っていて、ここまで書けばモンタージュ以上の立派なFakeだ。
よりわかりやすいのはBloombergの記事だ。
少し上で引用した8月3日午前00:07の読売の記事によれば
「ポンペオ氏は「日韓両国とも米国の大事なパートナーだ。両国が話し合って問題解決に向けて努力してほしい」と述べた。」とあるが、これはBloombergの記事と同じ内容の発言と思われる。
ポンペオ氏の元の発言。
そして同じ記事の中で、このポンペオ発言はワシントンの政府高官の"現状維持協定"発言のあとに出たと書かれている。
終わってからみれば、米高官発言に見る「現状維持協定案」は、ポンペオ国務大臣の「促す(urging)行為」とは別物だったと言うことがわかる。が、そこに至るまでの間、メディアを含む大多数の人間がこのモンタージュで錯覚してしまったと言えるだろう。
■伝言ゲーム?意図的なFake?
「米国務省当局者」は「双方に責任がある」「ここ数カ月の間に両国の信頼を傷つけた政治的決定について自己分析が必要だ」と指摘。
https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1156398675569983488?s=20
日
ロイターの記事を見ると、情報源はワシントンの共同通信のようだ。
ところがその共同通信は「ロイター通信が伝えた」と報道したようだ。
記事によると、「ポンペオ国務長官は8月1日にバンコクで予定する日米韓外相会談で、河野太郎外相と韓国の康京和外相と仲介案について話し合う方針」とのこと。因みにこの記事、しばらくの間webで読めなくなっていたが、午後か翌日かにweb記事として復活した。
その日の午前中に各メディアから情報が流れたが、それら各記事に共通して登場するのは匿名の「米政府高官」とされる人物だ。Bloombergによれば、米政府高官は「トランプ政権は日韓両国が交渉の部屋に自ら入るための"現状維持協定"を結ぶよう強く促す」と発言したらしい。
Trump administration was urging the two sides to reach a “standstill agreement” to give themselves room to negotiate.
これに対し、菅官房長官が米国の仲介案提示を否定。
米の日韓仲介提案、菅長官「そのような事実ない」 : 政治 : 読売新聞オンライン
www.sankei.com またTwitterでは、葉月二十八氏 @haduki28th により、アメリカ国務省公式のポンペオ国務長官の最新ブリーフィング資料にも、ポンペオ氏が日韓に仲介案を提示した等という記述がないことが指摘されていた。 https://twitter.com/haduki28th/status/1156442434525528069?s=20
さらに、Wall Street Journal誌はアメリカが仲介に乗り出すとする記事は最後の最後まで一切報じなかった。
ところが、その後もポンペオ氏が日米間外相会談を開き、米政府高官がいう"現状維持協定"を結ぶよう強く促すかの記事が世の中に溢れかえってきた。
「ポンペオ氏は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議でバンコクに向かう機中、日米韓3か国による外相会談を行う見通しを明らかにし、「日韓両国に前向きな道筋を見つけるように勧める」と意欲を示した。これに関連し、米政府高官は7月30日、読売新聞の取材に対し、新たな強硬措置を控える「休止協定」への署名を日韓両国に提案したことを明らかにした。」 「ポンペオ米国務長官は31日、米国の2大アジア同盟国である日本と韓国の外相と今週バンコクで会談する際に、両国間の外交摩擦の解消に向けた「道筋を見いだす」よう促す方針を明らかにした。」
「アメリカが両政府に対し、対立の原因となっている措置をいったん停止し、貿易問題について協議するよう促したと一部のメディアが伝え、今後、日韓がどのように対応するかが注目されます。」
「 ロイター通信は、米政府高官が30日、日韓が交渉を通じて対立を解消する協定に署名するよう提案する考えを示したと報じた。日本は輸出管理の優遇対象となる「ホワイト国」から韓国を除外する方針だが、提案は「現状の維持」を求める内容で、事実上、ホワイト国の除外手続き停止を求めた形となっている。 」
2019年8月1日、関西の朝の情報番組「す・またん」にて、ニュース解説担当の野村明大氏は、朝日新聞の記事を引きながら「ポンペオ氏が徴用工賠償を韓国政府に飲ませることに成功したら日本政府の外交的勝利になる」という内容を発言。
このことに関し野村氏は「菅官房長官は提案は受けていないと言っているが、受けたことを認めれば断れなくなるので知らないと言っているだけだ」「報道各社はワシントンで取材し、匿名政府高官が仲介すると言ったことを確認している」というような内容の発言をした。
野村氏の発言に象徴されるように、メディア各社は既に米国による日韓紛争休止協定提案は行われたと言う前提に立ち、日本政府はどのように交渉を乗り越えるべきかという報道合戦を繰り広げる恰好になっていた。
ところが、実際には、2019年8月2日午前10時40分頃、日本政府は韓国をホワイトリストから除外するとあっさり閣議決定、その日の夕刻、確かに日米間三カ国外相会談は行われたものの、ポンペオ氏は日韓両国が話し合いによる問題解決を目指してほしいという以上のことは発言しなかった。
さらに日本外務省幹部は「これまでも提案されていないし、今回の会談でも提案はなかった」と米政府高官発言を全否定した。つまり、ポンペオ氏が日韓に現状維持協定を締結するよう促すというのは根も葉もない情報、即ち所謂Fakeニュースだったことが濃厚になった。
ポンペオ氏「日韓が話し合い問題解決に努力を」
「ポンペオ氏は「日韓両国とも米国の大事なパートナーだ。両国が話し合って問題解決に向けて努力してほしい」と述べた。米政府高官は日韓双方に新たな強硬措置を控える仲介案を提案したことを明らかにしていたが、日本外務省幹部は「これまでも提案されていないし、今回の会談でも提案はなかった」と説明した。」